Jingle Bells, Shotgun Shells,
Jingle bells, shotgun shells, Santa Clause is dead.
Rudolph took a .410 and shot him in the head!
クリスマスなんて大嫌いだった。家族で集まってお食事会。一年間イイ子にしてればサンタが来る。悪い子リストに載ったら来年までお預けだ。ガキどもは靴下を吊るし、クッキーとミルクを用意してベッドに潜り込む。ティーンどもは浮かれて、好きなあの子とヤドリギの下でキスときた。
馬鹿馬鹿しい。
サンタクロースなんて実際にはどの家にも不法侵入しちゃいないし、そもそも今のシュテルンビルトに煙突のある家なんてない。子供達は悪い大人にサンタなんていないと教えられて泣き叫ぶ。俺はあれが煩くて嫌いだ。いるもんいるもんいるもん! そう泣き喚く子供に俺はいつも言ってやってる。じゃあ捕まえてみろよ、サンタさんをさァ。お前にそれができるか? できないだろ。ほらな!
俺の甥っ子なんかはまさにそのサンタさんを信じてるガキだった。姉夫婦にあたたかーく見守られて、毎年サンタさんにプレゼントをお祈りしてる。そんなもんは居ないと何度教えてもあいつは聞きもしなかった。だってサンタさんは去年もプレゼントをくれたんだよ、あいつがそう言ってニコニコするもんだから、サンタから貰ったっていう玩具の客船を運河に沈没させてやったのはいい思い出だ。ポカーンとした間抜け面がどんどん歪んでいって、シクシク泣くのを見たらスッキリしたね。
そんな俺がサンタならぬスカイハイを捕まえようと思ったのは、クリスマスが近づいて街じゅうが浮かれ、馬鹿みたいにホリデイソングを流しまくるようになった頃だった。クリスマスも嫌いだがホリデイソングはもっと嫌いだ。何しろクリスマスなら一日で済むが、ホリデイソングは感謝祭が終わった途端にかかり始めてクリスマス当日いっぱいまでわめき続けやがる。糞ったれのジングルベル。サンタの頭をショットガンで蜂の巣にしてやりたいね。
そんな訳で、毎年毎年特大のクソを食らわされたような気分になるクリスマスだったが、今年は違う。ヒーローTVで大活躍のあいつ、スカイハイが今年はサンタの代わりにシュテルンビルトを回って、スカイハイフィギュアを配るのだという。
スカイハイってのはちょっと前にデビューしたばかりの新参ヒーローで、空を飛ぶしか能のない奴だが、これが案外活躍していた。俺もちょっと気に入って珍しくマンスリーヒーローなんかを買ってきたりもしていた。コミックみたいに空を飛ぶヒーローが居たら面白いだろうとは思っていたし、今までのヒーローにまともに空を飛べるやつはいなかったからだ。別にヒーロー自体にそれほど興味があるわけじゃない。スカイハイは何となく俺の中で特別だったんだよ。
だけどあいつは今年、キングオブヒーローに選ばれた。初めてキングオブヒーローになった記念に、スカイハイのフィギュアが発売されたんだが、それがあんまりにも売れたので、今や品薄の影響もあってすっかりプレミアがついていた。ネットオークションでは何倍もの値段がついてるし、ヒーローカードだって完売だ。俺はというと、それですっかり白けちまった。おいおい、デビューしたてのペーペーがこんなにあっさりKOHだぜ。なんか天然っぽいのが面白いと思っていたけど、今になって思うとわざとらしいんだよな。キャラ作りってやつじゃねえのか。あの『ありがとう、そして、ありがとう!』って決まり文句を見ると、完璧ぶってんじゃねえよって反吐が出るね。最初の頃に、ちょっと気に入ったかも、なーんて思ったのが間違いだった。
今や俺はスカイハイが嫌いで嫌いでたまらなかった。買い溜めていたマンスリーヒーローはゴミ箱に直行させた。あいつのすかしたポーズも、ヒラヒラ飛び回る姿も、カマトトぶった物言いも気に食わねえ。お空を呑気に飛んでやがるあいつをショットガンで撃ち落として踏み付けてやりたい。そうは思うが、悲しいかな、俺はNEXT能力すら持たないただの一般市民だった。いつまでも姉貴のケツにしがみついてる、厄介者のルドルフ。赤っ鼻のトナカイですらないこんな俺に何ができるって? クソして寝るぐらいだよ。畜生。
だから、そんな俺にスカイハイをどうこうできそうなチャンスが巡ってきた時、俺は自分自身ですら信じられなかった。何の気もなく郵便受けを覗き込んだ俺は、ポセイドンラインからの、親展と書かれた厚みのある封筒を見つけた。裏にはスカイハイのサインが入っていた。ありえないだろ。おい、ありえないだろ。思わず口に出して自分に言い聞かせたね。だがそいつは俺の目の前で煙になって消えたりしなかった。つまりそういうことだ。とうとう俺のところに降ってきたんだよ、チャンスってやつが。
それはクリスマスが目前に迫って、ホリデイソングが一際煩くがなりたてていた日のことだった。その日、たまたま姉夫婦は甥っ子の通うエレメンタリスクールに行くってんで朝っぱらから出掛けていた。いつも通り、昼もだいぶ回った頃に起き出してきた俺は、テーブルに残されていたピーナッツバタージェリーサンドをもぐもぐやりながらぶらっと外に出てきてみた。まあお散歩ってやつだ。ただし二ブロックもいかないうちに冬の風が思った以上に寒かったからさっさと引き返した、そこで俺は見つけたのだ。スカイハイからの手紙ってやつを。
黙って周囲を見渡す。俺を見てるやつは誰もいなかった。
俺はその手紙を尻ポケットにねじ込み、ジングルベルを小さく口ずさみながら自分の部屋にとって返した。ジングルベル、ショットガンシェル、サンタクロースは死んだ。
部屋のカーテンは引きっぱなしで、暗いし脱ぎ捨てた服やら丸めたティッシュやなんかでぐちゃぐちゃしている。俺はこの部屋も好きじゃなかったが、そんなことは気にならなかった。皺の寄った封筒を破くと、中からはグリーティングカードみたいなものが出てきた。スカイハイが書いたと思われる文字は、あいつ同様お綺麗な印象だった。丁寧で無駄に気合いが入ったカードの中にはこう書かれていた。ハッピーホリデイズ! お手紙をありがとう、クリスマスには私が君のもとへプレゼントを届けに行くよ。君に会えるのが楽しみ、そして楽しみだ! 親愛なる、スカイハイより。サンタの帽子を被り、大きな白い袋を背負ったスカイハイのイラストも一緒に添えられていた。
スカイハイが、この家に来る。
俺は何度も何度もその手紙を読み返した。信じられるか。シュテルンビルトのキングオブヒーロー様が、この家に、あの阿呆面晒したガキに会いにくるんだ。クリスマスイブに。九インチかほんのそこいらのフィギュアを持って。
封筒には、手書きのカードと一緒に、印刷された紙が一枚入っていた。俺は楽しくなってそいつを声に出して読み上げた。ご家族へのお願ァい! スカイハイはクリスマスイブの十九時から二十三時頃に伺います。子供部屋の窓から入らせていただきたいので、訪問をご希望される場合はポセイドンラインのクリスマス企画室まで、ご希望の時間帯を明記の上ご連絡をお願いしまァーす。……ああ勿論連絡するさ、すぐにな。
早速記載されていたメールアドレスに返信した俺は、カードと紙と封筒を一纏めにして細かく引き裂いた。文字が判別できなくなるまで、丁寧に。そいつをトイレに流しながら、俺はニヤニヤ笑った。自然と鼻歌がこぼれる。最高の気分だった。
ジングルベル、ショットガンシェル、サンタクロースは死んだ。ルドルフが410番ショットガンで奴の頭を吹っ飛ばした!
……俺がそのルドルフだよ、スカイハイ。
* * *
甥っ子はスカイハイのクリスマスプレゼントになんか当選しなかった。俺がそういうことにした。それがどれだけ高い確率なのかなんて知ったこっちゃなかったが、甥っ子は泣きもがっかりもせず、いつも通りだった。まあそうだろう、普通はあんなものに当たるなんて考えないよな。朝食を出してやりながら、今年はプレゼントには何をお願いしたの、と姉貴が訊くと、スカイハイのおもちゃはサンタさんも用意するのが大変だろうから、他のにしたと話していた。他のって、どんなもの? 会話の内容に、俺は黙ってシリアルを掻き混ぜながら、にやつきそうになるのを堪えていた。残念! お前の今年のクリスマスプレゼントは俺がいただくんだよ。無言でいたら、姉貴に具合でも悪いのかと訊かれたから、マスターベーションしすぎて疲れてるんだと言ったら無視された。もうじきスクールバスが来るわよ、気を付けていってらっしゃい、だと。クソッ、あばずれが上品ぶりやがって。
姉夫婦は毎年クリスマスぎりぎりまでをこの家で過ごすが、クリスマス前日からは夫の住んでいる地区に行くことになっていた。家族で集まるんだとさ。アホみたいな習慣だとは思うが、申し訳なさそうに出かけていくあいつらを見送った後なら好き放題やれる。たまにつるんでる連中を集めて、俺たちもクリスマスパーティーと洒落込む訳だ。今年なんかゲスト様がいらっしゃるからな。俺に異議のあるはずもない。
それでも俺は慎重だった。何しろ千載一遇の機会だ、これを逃す馬鹿はいない。あのカードを見た瞬間から、俺はスカイハイをどうしてやろうかとずっと考えていた。あんまり考えすぎて、すっかりあいつで抜けるようになっちまったことだし、ここは折角だから本人に俺の息子の責任を取って貰わないとな。
確実にスカイハイをおびき寄せるために、俺は根回しをすることにした。
「あいつ、友達とかいないんじゃないのか」
毎年のように姉貴は俺にクリスマスの予定を訊いてくる。俺に何か予定があれば安心して出かけられるからだ。わかっていて俺も毎年予定なんてないから一人で寂しく待ってるぜ、と言ってやる。意味のない儀式みたいなもんだが、今回はその問いかけを待っていた。
「友達? 何のこと?」
案の定首を傾げた姉貴を、思いっ切り馬鹿にする目で見てやる。
「あいつを何歳だと思ってんだよ。この歳になったら友達の家でクリスマスパーティーくらいするだろ。どうせ今年も行けないからって断ってんじゃねぇのか」
言ってやると、姉貴はベッドですやすや寝ているところに水をぶっかけられたみたいな顔をした。俺もそうだが、姉貴もクリスマスパーティーになんか行ったことがない。俺たちがガキの頃はそんな余裕はなかったし、姉貴は誘われても必ず断っていた。だから思い至らなかったのだろう。俺はそもそも誘われたりしてなかったけどな。
「そう……そうね、クリスマスにはパーティーがあるわよね」
独り言をぶつぶつ言いながら、姉貴は電話帳を出してくるとどこかに電話をかけ始めた。子どもらしい幼少期を過ごせなかった姉貴は、自分のガキに幸福な子供時代を送らせることにかけてはいつでも必死だ。早速クリスマスパーティーについて話しているのを小耳に挟みながら、俺は成功を確信していた。あいつの一番仲良しの良い子ちゃんが、今年は友達を泊まりこませてパーティーをやるってことは既に聞き出しておいてある。姉貴が旦那の実家のパーティーを欠席するはずもないから、俺が送り出す担当になるのは目に見えていた。
思った通り、姉貴は息せききって戻ってくると、クリスマスパーティーにあのガキを参加させることにしたから、相手の親が迎えに来るのを待って引き渡して欲しいと俺にお願いし始めた。俺は散々悪態をつき、渋ってから、今年だけだからなと何度も念を押してやっとオーケーと言った。ついでに抜かりなく小遣いもせしめてやった。その方が自然だからな。一石二鳥だ。
準備は完璧だ。待ってるぜ、スカイハイ。クリスマスが楽しみだよ。
そうして待ち遠しかったクリスマスはあっという間にやってきた。俺は指定できる一番早い時間帯にスカイハイを呼び出しておいたし、適当に姉貴を言い含めた結果、スカイハイが来た直後に甥っ子を送り出す段取りを整えていた。
「それじゃあ行ってくるわね。明日の夜にはダディが迎えに行くから、いい子にしてるのよ」
姉貴はちょっぴり心配そうな顔をして、しかしたっぷりの愛情をこめて甥っ子の頬に音を立ててキスをした。クリスマスパーティーに一番浮かれているのは姉貴だった。自分の子供が幸せなクリスマスを過ごすのが嬉しくてたまらないんだろう。俺も不本意ながら甥っ子にはスカイハイというサプライズを用意していることだし、今年は最高のクリスマスになること間違いなしだった。
「それじゃあお願いね」
姉貴はにっこり笑って手をふると、旦那の待つ車へと走っていった。テールランプが夕闇に溶け込んでいくのを見送って、にんまり笑う。楽しいクリスマスイブの始まりだ。お祈りして待ってな!
スカイハイは十九時に来ることになっていた。あと、ほんの数時間だ。
甥っ子を放り出して、俺は仲間たちに連絡を取る。準備は完璧だ。ここまで来たら、もう邪魔の入りようもない。電話の呼び出し音を聞きながら甥っ子をチラっと見ると、大人しくヒーローブックか何かを読んでいるようだった。こういうところは手がかからなくて助かる。そうでなければ姉貴もよりによって俺なんかに預けたりなんかしなかっただろう。
仲間と落ち合う約束を済ませ、小さな肩ごしに覗き込むと、ヒーローブックのページいっぱいに広がる青空でスカイハイがぴしっと手を挙げて飛んでいた。あいつはいつもびっくりするくらい真っ直ぐな姿勢で空を飛ぶ。ただし空中で止まっているときはいつでも足が揃わない。案の定甥っ子がめくった次のページでは、あいつは微妙に股を開いたポーズをとっていた。その足の開き方に何の意図があるのかは知らないが、足をぴったり閉じられなくなるくらい散々突っ込んでやりたくなって俺はじっとり嗤った。もうすぐ、そう、もうすぐだ。
俺はだらだらとカレッジフットボールの中継を見ながらライムを絞ったビールを飲んだ。チップスの袋を破って広げたテーブルにはクランベリーもスタッフィングも載っていないが、それが俺のいつものクリスマスだ。今年は甥っ子がサンタさんに用意したクッキーが用なしになったので、そいつが加わっている。甥っ子はテーブルのチップスを見てちょっと変な顔をしたが、何も言わなかった。よしよし、いい子だ。後でご褒美をやるよ。
いよいよスカイハイが来るという時分になって、俺は甥っ子を引っ張ってくると、抱き込むようにして脚の間に座らせた。俺の脚の間にちょこんと腰掛けた甥っ子に話しかける。
「よく聞け、おまえにおじさんからプレゼントがある」
「プレゼント! わあ、おじさんありがとう!」
途端に笑顔になる甥っ子を振り向かせず、俺はあいつの耳元に囁くようにして教えてやった。
「いいか、とびっきりのプレゼントだ。ママとパパには内緒だからな」
「ないしょ?」
「ああ、内緒だ。それができないならプレゼントはやらないからな。いいか、絶対に内緒だって約束できるなら、お部屋に戻って窓を開けて待ってな。……おじさんが、お前のためにサンタさんを呼んでやったんだよ」
うん、わかった! 僕おじさんと約束する! そう言って真面目な顔で頷いて駆け出していった小さな足音を背景に、俺は抑えきれない笑いを小さくこぼした。甥っ子はアホだが案外鋭い。これから何をするつもりなのか、気配すら悟らせるつもりは毛頭なかったが、この分なら問題ないだろう。
俺はガキに続いてゆっくりと、クリスマスツリーの横の階段をのぼる。半月も前から、本物のもみの木を買ってきてみんなで飾り付けした立派なやつだ。こいつにも姉貴はずっと憧れていたそうで、実際この家でクリスマスを過ごす訳でもないのに飾り付けるのは毎年のことだった。年々ツリーが大きくなるのはご愛嬌だ。そいつを横目に眺めながら、ニヤニヤと唇がひくついているのは自覚できていた。それを抑え込みながら時計を確認する。ぴったりの時間だ。
子供部屋のドアを静かに開いた先、そこには果たしてあいつがいた。きっちり時間を守るのがヒーローらしい。
スカイハイ。シュテルンビルトの、キングオブヒーロー。
クリスマスだからだろう、マスクのてっぺんの角にはサンタの赤い帽子をひっかけ、白くて大きな袋を抱えている。
あいつが入ってきた窓は開けっ放しで、冬の冷たい空気がそこから入り込んできていた。屈んで子供の目線になったスカイハイの裾が安っぽいカーペットに広がっている。いつもスモッグで濁った空を飛んでいるというのに、実際に目にした白い布地には汚れひとつ見当たらなかった。そんなスカイハイが差し出すプレゼントを受け取る甥っ子は、棒立ちのまま声すら出ないくらいに感動しているようだ。まあそりゃあヒーロー様だからな。そうそう簡単にお目に掛かる機会もあるはずがない。
スカイハイは俺に気付いたようだったが、そんな素振りも見せずにガキと一生懸命話している。どうせ仕事でやってるんだろうが、スカイハイはこういうところは徹底している。
「わたしもヒーローとして頑張るよ。だから君にも、いい子で頑張ってほしい!」
「うん……うん!」
甥っ子は喜びで両目いっぱいに涙をためて頷いている。はいはい感動的だ。もういいだろう。お迎えも待たせてるしな。
スカイハイがひとしきりガキに話し掛けたところで、俺はひょいと窓の外を見た。
「おい、迎えがきたぞ」
わざとらしく言ってやると、甥っ子は弾かれたように顔を上げ、オトモダチの名前を叫んだ。頬を真っ赤にさせてにこにこしている。スカイハイにプレゼントを貰った後はパーティーだ。こいつもなかなか充実してんなー。まあ俺が全部仕組んだんだが。せいぜい感謝しな。
「迎え、かい?」
ここは自宅なのでは、と言いたげにスカイハイが首を傾ける。マスクの上の方についた青い宝石みたいな飾りが部屋の照明を受けてきらっと光った。
「こいつは今夜友達の家でクリスマスパーティーをするんだよ。……スカイハイ、ちょっと済まないがこいつを送り出してくるから、それまで待っていてくれないか。すぐ戻る」
プレゼントを渡したら用済みのはずだが、スカイハイはあっさり頷いた。まさかヒーロー様が一度約束したことを破ったりはしないだろう。そう確信して甥っ子の背中を押す。
「ほら、行くぞ」
「うん! ありがとうスカイハイ!」
甥っ子はぶんぶんとスカイハイに手を振ると、はしゃぎながら階段を駆け降りた。ドアの脇にはお泊り用のバックパックが準備されている。そいつを背負わせてやりながら、俺は甥っ子の顔を覗き込んだ。
「いいか、内緒だからな」
「このおもちゃは?」
「それは俺がお前にやったって言え」
「うん、わかったよ! ……おじさん、ありがとう! 今年は最高のクリスマスだよ!」
甥っ子は初めて見るくらい嬉しそうな顔で俺に礼を言った。黙ってガキの頭をぐしゃぐしゃやる。迎えにきたどっかのババアに引き渡して、これで俺の仕事は終わりだ。やっとガキのお守りから開放されて、深呼吸をひとつした。走り去っていく車が完全に見えなくなるあたりで、俺の家の前には車が何台かゆっくりと近付いてきているのを確認した。人数は指示通り八人で、俺を入れたら九人になる。せっかくだからトナカイの数に揃えてやったんだ。俺はそちらに軽く手を振っておくと、ドアを開けたまま家の中に戻った。これからがクリスマスの本番だ。ようこそサンタ、お前の歓迎パーティーといこうじゃないか。トナカイたちで祝ってやる。
階段を登る。みしみしと音をさせながら。室内はセントラルヒーティングで充分に暖かいが、俺の背筋はぶるぶる震えた。開けっ放しのドアから風が吹き込んできているせいじゃない。スカイハイがいるからだ。甥っ子の部屋で、大人しく待っている。あいつが今夜の主役だ。
「悪いな、待たせちまって」
「いや、構わないよ。わたしに何か用事でもあるのかな?」
「実は甥っ子があんたに渡そうとミルクとクッキーを用意してたんだよ。ほら、今年はあんたがサンタクロースだろ?」
「そうだね、そして、その通りだ! 君の甥御さんとはあまり話をする時間がなくて残念だったが、よかったら記念にいただきたい」
「じゃ、下に来てくれ」
スカイハイと話すのは初めてだったが、我ながら自然な演技だ。俳優にでもなったほうがいいかな。俺はスカイハイを後ろに従えて階段を降りた。スカイハイはプレゼントが詰まった巨大な袋ごと一緒に降りてくる。開け放しておいたドアが閉まっているのが階段の上からでも確認できた。俺はニヤニヤ笑いを噛み殺し、階段を下りきったところでおもむろに振り返った。
「そういやスカイハイ、悪いがプレゼントの予備って持ってるか? さっきあいつが箱を開けたら中身がちょっと壊れてたみたいだ」
「! それはいけない! 予備ならひとつあるから、それを渡そう」
クリスマスツリーの下に袋を下ろしたスカイハイは、屈み込んでごそごそやり始めた。その後ろから、俺の楽しーいお友達がゆっくりと近寄ってくる。俺も、俺のダチも、自然と笑顔になる。
スカイハイはプレゼントに気を取られて完全に無防備だ。
「ああ、よろしく頼むよ」
俺はにっこり笑って頷いた。
* * *
「おはよう、スカイハイ。よく眠れたか?」
何度か瞬きを繰り返し、緩く頭を振ったスカイハイの前にしゃがんで、笑いながら目の前で手を振ってやる。頭を振る動きに合わせて被せておいたサンタの帽子の先がゆらゆら揺れる。
意識を失ったスカイハイのマスクを外してみると、その下からはそこそこ予想通りの男が出てきた。
金髪で、若い。人種はコーカソイド。しかもイケメンだ。こんなとこまでよく出来てるなと、俺たちはもはや嫉妬どころか感心するばかりだった。それからそうしばらく経たないうちに目を醒ましたのは褒めてやってもいい。ある程度基礎体力がある証拠だからだ。柱に両手を縛りつけるついでにヒーロースーツ越しに確認したが、体格もいいし、よほど普段鍛えてるんだろう。充分に楽しめそうだ。
「一体何が……」
スカイハイは自分が意識を失っていたことに気付いて戸惑っているようだった。うん、意識を失わせたのは俺たちなんだけどな。笑顔で見守っていると、しばらく不思議そうな顔をしていたスカイハイは、ふと腕を動かそうとした。
ガシャン!
ぶっといチェーンでクリスマスツリーごと柱に固定しておいた腕は、ほんの少し上がったかと思うと反動で引き戻された。その時ようやく自分が拘束されていることに気付いたらしいスカイハイが、はっと両目を見開く。青い、青い目だった。ちょっと見かけないくらい綺麗な色だ。夜明けに空がときどきびっくりするほど青くなる時があるが、その時の色に似ている。
「君たちは何故わたしを拘束しているんだ」
赤ずきんちゃんのような質問に、俺の仲間たちが失笑した。そりゃあ目的があるに決まってるし、普通その目的は大概三つくらいのパターンに落ち着く。つまり、暴力か、金か、セックス。そして俺たちが求めているのは最後のひとつだ。
あいつはようやく自分が異常な状況に置かれていることを把握したようだった。そりゃあマスク脱がされて拘束された上に、ヒーロースーツの下半身部分を殆ど切り裂かれている状況がマトモなはずもない。ヒーロースーツは流石に頑丈にできていて切り裂くのにはだいぶ苦労したけど、そんなことはどうでもいい。
俺はスカイハイの言葉を無視して、あいつが抱えてきていたプレゼントの袋を覗き込んだ。
「なあこれ全部スカイハイのフィギュア? いいねえ、オークションに出したら小遣いくらいにはなるかな」
手近な箱をひとつ取り出して見せる。正直なところ、オークションに出して小遣いを稼ぐのも面倒だからそんな気はさらさらなかったが、俺の発言にスカイハイは真っ青になった。
「フィギュアは……フィギュアだけはやめてくれ! 子供たちが待っているんだ」
思った通りの反応だ。俺はほらよ、と声を掛けながら仲間のひとりに箱を投げてやった。キャッチしたやつがニヤニヤ笑いながら箱を手の中で回す。
「それだけはやめてくれ!」
「どうしよっかなー」
スカイハイのフィギュアは、出し惜しみをしているんじゃなく、物理的に工場での生産が追いついていないからこれ以上作れない。姉貴の旦那がそう話しているのを聞いて、そんなもんかと思っていたが、その様子だと噂は本当なんだろう。これを俺たちがパクったら子供たちへのプレゼントが用意できなくなっちまう、そういうことらしい。
音を立てて床に放り出したプレゼントを仲間が踏もうとすると、スカイハイはいよいよ焦った顔になった。まだほんの数十分しか素顔を見ていないが、こいつ案外思ったことが顔に出るんだな。
スカイハイは彫刻みたいな顔を歪めて、くっと眉を寄せた。青い目がもっと青くなる。能力を発動しようとしているのだろう。
「……! 何故……」
そしてすぐに気付いたようだった。能力が発動できないってことに。
「仮にもヒーロー様を捕まえておいて何もしない訳がないだろ。ははっ、ざーんねん! あんたの能力は当分使えないんだよ」
NEXT能力を殺す薬がこのシュテルンビルトに出回っていないはずもない。スカイハイの両目は青く光ったが、それだけだった。風も起きないし体も浮き上がらない。噂には聞いていたが、ここまで完全に封じられるとは、なかなか便利な薬があったものだと思う。結構高かったんだからそのくらいの価値がないとな。常用していると人体に害がありすぎるってんで規制されたものだが、もともとは能力が暴走しちまう奴のために開発された薬だ。能力を自力で制御できる奴が飲む必要もないはずだし、一回くらいなら大丈夫だろう。
まあこいつに仕込んだ薬はこれだけじゃないんだが、もう片方についてはどうせすぐに思い知ることになるから、そっちは説明するまでもないな。後のお楽しみってことさ。
仲間の靴がゆっくりと箱に迫る。それに合わせて俺はスカイハイを覗き込んだ。
「あんまり逆らおうとすると踏み潰させるぞ」
「それだけは……!」
スカイハイは苦しそうな顔で俺とプレゼントを見比べた。保身とたかだかガキどもへのプレゼントが同じ天秤に載るってのも凄いな。普通はこんな脅しなんか通じないはずなんだが、こいつに限っては有効なようだ。
「君たちはわたしに何か恨みでもあるのか? 頼む、それ以外なら何をしても構わないからやめてくれないか」
それだよ。その言葉を待っていた! 喝采を叫びたい気持ちでいっぱいになる。まさかこんなに簡単に事が進むとは思っていなかった。あんまりにも上手くいきすぎて少々呆気にとられたが、状況としては完璧だ。手を差し出すと、仲間は素直にプレゼントの箱を投げ返してくる。それをスカイハイの目の前で軽く振りながら、俺は子供に物事を言い聞かせるときの姉貴のような素振りであいつの顔を覗き込んだ。
「よし、じゃああんたが抵抗しないでいい子にしてたらプレゼントをやるよ。それでいいか?」
スカイハイは不安そうな顔のまましばらく考えているようだったが、やがてはっきりと頷いた。完璧、完璧だ。
「それじゃあ最初の注文だ。……フェラしろ」
俺が言うと、仲間たちがどっと沸いた。一人がひゅう、と口笛を吹く。スカイハイはちょっと何を言われたのかわからないって顔をしている。
ちょっと仲間を見遣ると、頷いた一人が早速スカイハイの拘束を解いた。両手だけは後ろに縛ったままだ。スカイハイの能力なら俺たちみたいな一般人なんてどうにでもなっただろうが、こいつは一度約束したことをひっくり返せない、いわゆる優等生タイプだ。自分で自分を縛って水没するクチだろう。俺のハイスクール時代にもこんな奴はいた。今はどうなったか知らないが、あいつをおもちゃにしていた仲間たちなら解っているはずだ。そちらを見ると、案の定あいつらはニヤニヤしながらすっかり見守る態勢になっている。そう、夜はまだ始まったばかり。全てはこれからなのだ。
ツリーのすぐ横の階段に座ってジーンズの前を寛げる。取り出した俺の息子は期待感で既にだいぶ膨らんでいた。
「こいつを舐めるんだよ。ほら、さっさと来い」
促すと、信じられないものを見るような顔をされた。仲間の一人が、行けよと言ってスカイハイの背中を押した。ヒーロースーツを切り裂かれて露出した下半身を白い裾で隠し、ぎこちなく俺の前に座り込んで、どうしたらいいのか解らないって言いたい顔をしている。フェラって言葉は聞いたことがあるけど実際どうなのかは知らないんだろう。おいおい、今時ティーンでもこのくらいするぜ。まさかこいつ女の子とベッドに入ったこともないのか。いい年齢してそうに見えるんだが。
そう考えたらますます面白くなってきて、俺はスカイハイの耳にそっと口を近づけると、俺のペニスを舌で舐めろって言ってるんだよ、と改めて教えてやった。精液が出るまで舐めて吸いな、キングオブヒーロー。
「そ……そんな、」
「あれー? 何でもするって言ったのは嘘だったのかよ、キングオブヒーロー様」
言いかけた言葉を遮って睨みつける。言葉に詰まったスカイハイは、しばらく途方に暮れたような顔で俺と俺の息子を見ていたが、そのうち決断したのか、恐る恐る顔を近付けてきた。舌先でちょん、と触れる。ぐっと眉が寄る。そのまま舌を伸ばして、次はぺろりと舐める。気持ちよくもなんともないが、せっかくの初めてのフェラだし、黙って見守ってみる。反応がないことが不安だったのか、スカイハイは俺をちらっと見てから、意を決したように顔を近付けて先っぽに吸い付いた。歯が当たって痛かったから不愉快な顔をしていたら、すぐに気付いたのか何とか歯を当てないように四苦八苦しだした。おーおー健気だねえ。こりゃ楽しめそうだわ。
スカイハイの向こうを見ると、仲間たちは持ってきたビールなんか飲みながら俺たちを眺めている。勝手に甥っ子のゲーム機に電源を入れて遊んでいる奴もいる。もともと俺のお陰でこんな機会ができたんだから、あいつらも俺を立ててくれているのだろう。どうせ夜は長いんだ、目一杯楽しむのは後からでも遅くはないって訳か。それに、急ぐ必要がない理由ももうひとつあった。こいつにはちょっとばかり時間が必要だからな。
仲間の一人がこっちにやってくると、笑いながら俺の隣に座ってスカイハイに色々指示を出し始めた。もっと深く銜えるんだよ。顔を前後させろ。ほら、そうだよその調子。
「んぐっ、ぐぶ……っ」
スカイハイは苦しそうに呻きながら、それでも指示通りに俺のペニスを口一杯に頬張って顔を動かした。ちょっと涙目になってるのがいいね。しばらくそうやってるうちに、一層顔を歪めて何か吐き出そうとした。
「うっ、うえっ……」
「あーダメダメ」
俺はスカイハイの顔を掴んで口を開かせる。チンカスが溜まっていたのが口に入って気持ち悪いんだろう。あーなんかねちょねちょしてんな。うっわ不味そう。食ったことないから知らないけど。
「お前に食わせるためにとっといたんだから、よーく噛んで飲み込めよ。いいか、出されたもんはチンカスだろうが精液だろうが全部食え」
適当なことを言って丸め込もうとしたが、あいつが涙目で小さく抵抗しようとするので、俺はスカイハイの頬を引っぱたいた。パン! という音は予想以上に大きく響いた。スカイハイはと言うと、叩かれた痛みより、叩かれたこと自体にショックを受けているようだった。そうだろうなあ、こいつなんとなく育ち良さそうだしなあ。だから尚更面白いんだけどな。
「ほら噛め」
念を押すように言うと、スカイハイは俯いて口をモゴモゴやった。そのまま飲み込ませずに、もう一度俺のを銜えさせる。顔を歪めたまま必死で俺のを舐める姿は正直可愛かった。立派なガタイの男を捕まえて可愛いはないだろうと我ながら思うが、いい年してなんもわかってないガキみたいな感じがいいんだよ。あーテクはぜんっぜんないけど気持ちいいなこれ。ヒーロー様が俺のアレを必死になってしゃぶってるって思うだけで興奮するわ。
「んむ……んっ、ん……」
しばらくそうやって続けていると、スカイハイが唐突に顔を上げた。物凄く苦しそうな、それでいて不思議そうな表情をしている。あーそろそろ効いてきたんだろう。
腹に仕込んだグリセリン溶液が。
「んっ、んぐっ、ふぐ……」
口の中でどんどん膨張するイチモツのせいで息苦しいのか、あるいは排泄したくて腹が痛いのか、スカイハイは絶えず喉の奥から声を漏らした。もぞもぞと腰が揺れて、感じてるみたいに見えて何となく盛り上がる。そういや先に排尿しておかないと膀胱が圧迫されて尿意が先に来るとか書いてあったな、説明書に。そりゃ必死な顔にもなるか。スカイハイも出したくてたまらないのだろうが、俺の方もいよいよ出そうになって、スカイハイの頭をサンタ帽ごと掴んで無理矢理前後させた。
「んんぐっ! ぐうっ、ぶ、んんうーっ!」
半ば悲鳴じみた声がくぐもるのにますます興奮する。最早無言になって一心にスカイハイの喉の奥にペニスを何度もぶち込んだ。やっぱオナホより人間が断然いい。気付くとスカイハイの様子を見に何人か戻ってきていた。壁に凭れかかり、ビール片手にスカイハイを見てニヤニヤしている。太腿を擦り合わせてもじもじしながら男のペニス銜えてるスカイハイなんてそうそう見られるもんじゃない。
「ペニス銜えて感じてるのかよ」
「うっわ、淫乱」
「ううっ、ぐっ、ふぐうううっ」
野次が飛ばされる。スカイハイは否定する余裕さえなく、青い目から涙をぽろぽろ零しながら揺すぶられている。その度にサンタ帽の先の飾りがぽんぽん跳ねた。顔は真っ赤で、額には脂汗が滲んでいる。えづきそうになる度に咽喉の奥がぐっと締まってかなり具合がいい。こいつ結構素質あるんじゃねえの。あー可愛いなほんとスカイハイ可愛い。俺は出すと宣言さえしないであいつの喉の奥目掛けて思いっ切り射精した。びゅーっ、びゅーっと音が聞こえてきそうなくらい、勢いよく。
「ぐぶっ……! んぐっ……ぐううっ!」
喉の奥にぶち撒けられ、驚いた身体が暴れる。よほど苦しいのだろう、噎せて背中が何度も跳ねた。俺はそれを強引に押さえ付けて最後まで出し切る。欲を言えばお掃除もして欲しかったが、それは後に回せばいい。
口からペニスを引き抜くとそのまま精液を吐き出そうとする、その顔を掴んで俺は言い聞かせた。
「飲め。吐き出したらここで排泄させるからな」
スカイハイは腹の痛みがグリセリン溶液によるものだとは全くわかっていないようだった。何故俺があいつの腹痛を把握しているのかと、驚きの視線を向けられる。吐き出せず、かといって飲み込めもせずにぷくっと膨らんだままの頬を撫でてにっこり笑いかけた。
「ここでぶち撒けたいか?」
俯いた顔を金髪が隠す。今度の葛藤は短かった。
ごきゅ、と喉が鳴る。飲み込みづらいのだろう、涙ぐんで何度も嚥下しようとしては、時折吐き出しそうになるのが可哀相で見ていて楽しいことこの上ない。切羽詰まってるせいで、もどかしそうに飲み込みながら腰が忙しなく揺れる。歪む唇の端から唾液混じりの精液がつうっと垂れた。囃し立てる声に囲まれてやっと飲み込んだスカイハイは今にも声を上げて泣き出しそうだったが、それを必死で堪えている。
「くは……」
やっと息継ぎができたスカイハイが、命令してもいないのに空っぽになった口を開けて俺に見せた。口の中は唾液だの精液だのでぐじゅぐじゅだ。こうまでして見せるということは、よほどトイレに行きたいのだろう。俺は満足して頷くと、仲間に手伝って貰って力の抜けたスカイハイの身体を両側から支えて立ち上がらせた。ま、連れて行く先はトイレじゃないんだけどな。これから何が行われるかわかってる仲間がやっぱり愉しそうに笑いながら二人ばかり後ろに続いた。
我慢も限界だったんだろう、あからさまにほっとした顔をしていたスカイハイだったが、バスルームに連れ込むとトイレを見てますます肩の力が抜けたようだった。俺はそこを素通りして、ユニットバスにぬか喜びしているスカイハイを押し込んだ。
「えっ、えっ」
戸惑った顔で俺を見る。助けて貰えるとでも思ってたのか? 馬鹿な奴だ。
「ここで出せ」
「えっ……」
スカイハイは言葉を失った。
「じゃ、あとは任せるわ」
言って一歩下がると、俺のダチどもは楽しそうに笑いながらスカイハイに迫った。長い裾を上げて、バスタブのふちに座らせる。ほとんど露出していた下半身を辛うじて覆っていたヒーロースーツを更に大きく引き裂いてケツを出させる。
「やっやめ……!」
抵抗するスカイハイも、約束はどうしたんだよと言ってやれば大人しくなった。それでも強情に出そうとしないものだから、何度も腹を圧迫される。俺はいわゆるスカトロには興味がなかったので、トイレの蓋を下ろして座ったままスカイハイが追い詰められていくのを眺めていた。
スカイハイの顔は我慢し過ぎて真っ青だった。脂汗をたらたらと垂らして首を振る。もう言葉も出ないんだろう。頑張るなーほんと。仲間が洗面台に放置したビールを煽りながらそんなことを考える。シャワーを出したのか、あたたかな湯気が立ち込める。限界を超えたスカイハイはとうとう泣き出していた。フェラを強制した時も泣かなかったのに、流石にこれは屈辱ってレベルじゃないよな。俺なら無理だね。
「ふっく、うっ、ううっ……」
洗浄が済んでユニットバスから出されたスカイハイは綺麗な顔を歪めてガキみたいにシクシク泣いていた。タオルで拭かれるのもされるがまま。あー可哀相で股間にくるわ。ダチどもも興奮してジーンズの下を膨らませているのが見えた。スカイハイだからってのも確かにあるけど、こいつほんと虐めたくなるタイプだよな。なんも知らなさそうなのがまた、イロイロ教えてやりたくなる。そうこうしているうちにスカイハイがバスルームから出される。飲み切った瓶をゴミ箱に投げ込み、俺も後に続く。
連れ戻されたスカイハイはすっかり気力を失って項垂れていた。そりゃそうだ。人としての尊厳まで剥ぎ取られたみたいなツラにもなるよなあ、ありゃ。俺はホモじゃなくてよかったなーほんと。
長い裾を押さえて前を隠そうとしているスカイハイを座らせて、そのまま背中を後ろに倒す。途方に暮れた顔つきで俺を見上げてくる、その瞳にクリスマスツリーの電飾が反射してとーってもロマンチックだ。舌なめずりをすると、スカイハイはヒッと小さく息をのんだ。
幾ら裾で隠そうとしたって、立てたままの膝の間から局部が丸見えだ。ヒーロースーツの下半身はびりびりに引き裂いたが、ブーツは脱がせていない。その分脚が持ち上がっていて、そこからの眺めに普段ヒーローTVを見ながらもやもやしていたものがすっきりするような気分だった。あ、こいつブーツのヒール結構あるな。身長があんまり高くないからそれを隠すためだろう。そんなことに気付いてニヤニヤ笑う俺に、やっぱりにやけたツラの仲間がバイブを差し出してきた。一応初めてだろうから、初心者用のちょっと細めのやつだ。ただし長さはかなりある。俺はローションをバイブに塗ったくり、スカイハイが戸惑っているうちにそいつをぶち込んでやった。
「あっあ、あああああああ……っ!」
悲鳴と共にスカイハイの背中がぐっと反る。その動きに合わせてぐいぐい押し込むと、さっき洗浄されたばかりで緩んでいたスカイハイのアナルは思いがけない素直さでバイブを飲み込んだ。どんな顔して悲鳴をあげているのか、覗き込んで確認する。
「はひっ……ひっ……」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を引き攣らせて、スカイハイは笑っているような、怯えているような顔で震えている。自分に何が起こっているのか、確認するのさえ怖いとでも言いたげな顔だ。
「うわーひっでえ」
「もっと優しくしてやれよ」
言ってる奴らの声が半笑いだ。何度かぐりぐり捻るように押すと、バイブは抵抗を感じながらもぬぶぬぶ音を立ててスカイハイの中に収まった。スカイハイの下腹と内腿がビクビク痙攣している。ちょっと無理矢理だったが大丈夫だろ。このバイブはそこそこ高性能で、ハジメテの奴でも楽しめるように、タマの裏からケツの穴にかけての部分を刺激できる突起がついている。そいつを押し当てて中に収まったバイブごとぐぬぐぬ回すと、スカイハイはの泣き声が裏返った。
「ひううっ!」
「あ、感じちゃった? ここってイイらしいな」
「ははっ、かわいー」
遠慮なくぐいぐいこね回す。そうするとスカイハイが筋肉質な身体をいちいちぎゅっと竦ませて小さくしゃくり上げた。あれだけぐすぐす泣いてたっていうのに、涙も引っ込んだようだった。いやー身体は素直だねえ。
「なに、なっ……! ふあっ!」
スカイハイがびっくりした顔で俺たちを見回した。泣いたせいで目のあたりが赤い。うんうん、そうだよな、ケツで感じるの初めてだよな。スカイハイのペニスは萎えて縮こまっていたが、それがほんのちょっと元気になったように見える。眺めているとバイブに刺激されてかピクっとひくついた。よしよし、いい傾向だ。したり顔で頷いて、あいつの脚をひとまとめにしてガムテープでぐるぐるに縛る。揃えた脚をぴったり閉じさせて顔を上げると、示し合わせたように腕も後ろ手に括られていた。完全に拘束した訳じゃないが、自由もあんまりない、いい状態だ。その両腕をツリーに引っ掛けて、よし、準備完了。
パンパンと膝を払って立ち上がる。心得た仲間たちが俺に続いた。
「よし、休憩といこうか」
あくびなんかしながら、わざとらしくダチどもに話し掛ける。そうしよう、と口々に返答が上がる。俺はゆっくりリビングルームへ向かって歩いていった。ぞろぞろと仲間たちがついてくる。
「おい、試合はどうなったんだよ」
「まだハーフタイムさ。あとクォーターが残ってる」
「冷蔵庫にビールあるか? 貰うぞ」
「勝手に飲めばいいだろ。うっわ、しけてんなー」
「ロングホーンズとどこがやってんだ?」
「スーナーズだ。ま、ロングホーンズが今年も勝つけどな!」
「おっ賭けるか? ……」
がやがやと喋り散らしながら思い思いにテレビの前に陣取る。付けっぱなしだった画面の向こうではチアリーダーが踊っている。
俺たちはあえてスカイハイのことなんて忘れてしばらくそうやってテレビを眺めた。普段の俺たちのクリスマスの過ごし方なんてこんなもんだ。デリバリーのピザを頼み、ビールをかっ食らいながらだらだらフットボールの試合を見る。どのチームが勝つか賭けをして、負けたやつがショットをおごる。ただ、今年はそれが少しだけ違っていた。まず、ピザを注文していない。普段ならもっと盛り上がる試合も、なんとなく味気ない。ツリーの下に転がされているスカイハイに、誰もが意識を向けているからだ。ハーフタイムのチアリーダーたちを品評するのも楽しみのひとつだったはずだが、今夜に限っては気付いた時にはチアリーダーたちはスカートをひらひらさせながらひっこんでいて、いつの間にかブラスバンドが意気揚々と演奏している。黙りこみがちにビールをやり、俺たちは試合が終わるのを待ち遠しく見守っていた。
「……だから言ったろ、ロングホーンズが勝つに決まってるってな!」
「あんなのはまぐれだ」
「まあまあ、そう熱くなんなって。奢り楽しみにしてるぜ」
試合が終わってから、誰もが動かずにその場で会話しはじめる。本当はツリーのところまですっ飛んでいきたいんだが、お楽しみは後にとっといた方がよっぽど楽しめるって、みんなわかっているからだろう。
「……そろそろキングオブヒーローでも見に行くか?」
「ああ、あいつも待ち遠しがってるだろうしな!」
一人が口火を切ると、皆それに賛同して立ち上がった。ケツにバイブをぶち込まれてずっと放置されていたんだ、どうなっているかなんて考えるまでもない。それでも俺はクリスマスの朝のガキみたいに気持ちを昂らせている。二階まで吹き抜けた高い天井に俺たちの靴音が反響する。ほら、そこの角を曲がればクリスマスツリーが見える。
ああ、今年は本当に、本当に最高のクリスマスだ。
「ああっ、はあっ、あっ、ふあああ……」
ツリーに両腕を高く括り付けられて、スカイハイは真っ赤な顔で喘いでいた。ツリーに擦り付けられた金髪が乱れきって頬を覆っている。サンタの帽子なんかとっくに落ちていて、散々腰を捩ったのだろう、すっかりケツの下に敷かれ、精液まみれになっていた。
バイブはまだ動き続けていて、その振動と回転に合わせて奴の腰がもぞもぞ揺れている。股間のペニスはすっかり膨らみ、垂れた精液がケツまで滴っていた。
「んんっ、ふうっ、んふっ、あああっ」
虚ろな目で虚空を見つめるスカイハイは、俺たちが戻ってきたことにも気付いていないようだった。ああ、本当にいい眺めだ。最高だよ、キングオブヒーロー。
俺たちがゆっくりとあいつを取り囲むと、ようやく視線を上げたスカイハイがびくっと全身を震わせた。俺が代表してスカイハイの横にしゃがみ込む。顔の近くにあるオーナメントを手に取ると、奴はまた怯えた顔をした。羞恥と恐怖が混ざり合った表情。負け知らずのヒーロー様がこんな顔をしていると思うだけで堪らない。
「随分楽しんでたみたいじゃないか。……なあ、気持ちよかったか?」
俺の質問に、スカイハイは唇を噛み締めた。既に何度も噛んでいたのだろう、ぼってりとした下唇にはうっすら血が滲んでいる。返答に逡巡するのも当然だろう、どう答えたって同じだからな。
それでもスカイハイは折れていなかった。さすが俺たちのキングオブヒーローだ。そこだけは認めてやってもいい。
「……わたしは、決して、屈したりはしない」
「屈しまくりだろ! おいおい、あんた何回イッたんだよ、ぐしょぐしょだぜヒーロー!」
爆笑の渦が沸き起こる。ただ単純に笑えるだけではない、バイブを突っ込まれてイキまくっても強がってるヒーローをこれからどんな目に遭わせるか、そんな期待の籠もった笑いだ。こみ上げてくる笑いを隠しもせずに、もう一度スカイハイに質問する。
「訊いたことにちゃんと答えろよ、キングオブヒーロー。気持ちよかったのか?」
「よ……よくない。んんっ、これは、わたしが望んだものでは、ない」
頑張って答えたのはいいが、半ば自分自身に言い聞かせているんだろう、目をかたく閉じてスカイハイはそう言った。それがパーティーの再開の合図だった。
「そうだよな、感じるはずがないよなぁ、こんなオモチャなんかじゃ。……本物で好きなだけ気持ちよくしてやるよ」
「ひっ……!」
俺がAVで見たまんまのセリフを言うと、スカイハイは今度こそ完全に恐怖に染まった悲鳴を上げた。慌てて周囲を見回すが、ここにはこいつのためのヒーローなんていない。俺たちは次々とスカイハイに群がると、脚を縛っていたガムテープを鋏で切って開かせた。暴れようとする脚を両脇から押さえつけて開かせる。クリスマスツリーがゆさゆさ揺れて、ぶら下がったオーナメントや電飾がチャラチャラ音を立てた。
「やめっ、や、いや、嫌だ! やめてくれ……!」
涙ぐんで必死に助けを求めるスカイハイ! こんなのが見られるなんて、つい数ヶ月前の俺は思ってもみなかった。ヒーローアワードでMVPを獲得してレッドカーペットを歩いていたのが、昨日のことのようだ。せっかく応援してた新人ヒーローがあっという間にキングオブヒーローになって、裏切られたような気持ちになったのを今でもはっきりと覚えている。あの時のこいつだって、あれからほんの少し先にこんな目に遭うとは思ってもいなかっただろうな。しかも、こんな状況を作ってるのはこの俺だ。能力もコネも力もない、ただの一般人。スカイハイがいつも守るってご立派に宣言している、シュテルンビルト市民。たかだか何個かのオモチャのために好きなようにいたぶられて、どんな気持ちなのかインタビューしてやりたいくらいだ。
「はあっ、は、あ、嫌だ、いや……ふあっ!」
何とか脚を閉じようとして内腿がぶるぶる震える。だが力を籠めるとケツに突っ込まれたバイブも締め上げてしまうのか、スカイハイの呼吸は一層乱れた。一瞬イキそうになったのだろう、目が虚ろになって、口の端から唾液がつうっと流れる。
最初にスカイハイをレイプするのは、俺だ。
俺はスカイハイの脚を抱え上げ、身体を後ろのツリーに凭れるように倒してやる。俺のペニスはもうとっくに準備万端だ。慌ただしくそいつをジーンズから引きずり出したところで、奴がまだバイブを咥え込んだままだってことに気付いた。焦りすぎだろ……。平静を装ってペニスにローションを塗ったくり、改めて奴に向き直った。
バイブの根元を掴んでぐっと引く。あいつの中はぶるぶる振動してうねるバイブをぎっちり咥えて離そうとしない。構わず力をこめてずるずる引き抜くと、スカイハイは背中を反らせて悲鳴をあげた。
「ひうっ! あっ、ああっ、んああああっ!」
掴まれた足の、ブーツの先がピンと伸び切って細かく痙攣する。今夜まだ誰にも触られていないはずの性器から、精液が勢い良く迸った。腰を抱え上げた姿勢だったせいで、精液がヒーロースーツの胸まで飛ぶ。よく鍛えられた分厚い胸板に精液がぶちまけられるのを見て、俺の興奮もいい加減頂点に達している。ゴトン、と音を立てて、何だかよくわからない液体に塗れたバイブを放り投げた。硬い床の上でバイブがガタガタ音を立てながらのたうち回っている。
「あ……ああ……」
呆然とするスカイハイの身体からは力が抜けていた。もう何回か射精してるはずなのに、俺たちの前でイッたのがよほどショックだったのか。今からこんな調子で果たしてこれからの展開に耐えられるのかどうか、ますます楽しみになるな。
俺は今度こそスカイハイの腰をしっかり抱え込んで、ペニスを掴んで突っ込む場所を何度か確認する。ぐりっと擦り付け、そこが反射で締まる前に、奥を目指して容赦なくぶち込んだ。
「……! ……っあ、……っ!」
ぼろ、とスカイハイの見開いた目から涙がこぼれた。声も出ないのか、口が何度かぱくぱく開いたが、それだけだった。一拍遅れて中が痛いくらい締め付けてくる。俺は何度かスカイハイの腰を抱え直すように揺さぶって、それから本格的に抽送を始めた。
「あああっ! あっ、あっ、あっ、痛っ、ああっ、いあっ、ぐうっ……!」
「うわ、いいなこれ」
あいつの中はきつかったが、我慢できないほどではない。そして、スカイハイ自身も、感じているのは痛みだけではないことが明白だった。頬が紅潮し、唇をわななかせて驚いたように俺を見上げる。そりゃそうだろ、そうでなきゃ何のためにバイブ突っ込んだと思ってんだよ。
「なっ、なにっ、なっあっあっんあああっ!」
揺さぶられているせいでスカイハイの喘ぎ声も揺れる。身長は低めだが鍛え上げられた身体の男がやっすいポルノみたいな声を出しているのが愉快でたまらない。俺が突き上げるとぽろぽろと涙が頬を転がり落ちるのも見ていて楽しいことこの上なかった。
「処女喪失おめでとー!」
「なにじゃねえよ、ナニはもう突っ込まれてるだろ!」
野次が飛ぶのも聞こえているかどうか。スカイハイは縋るように俺を見たまま混乱している。
散々バイブでいたぶられたせいなのか、あるいはもともと才能があったのか。どう見ても初めてだというのに、奴の中は驚くほど柔軟に俺のモノを呑み込んでいる。押し拡げ擦るごとに痙攣して絡みつく、その動きに逆らうように強く抉るとスカイハイの口からは言葉にならない喘ぎ声が押し出された。ペニスを突っ込まれて中を擦られているうちにいよいよ感じてきたのだろう、スカイハイの腰が俺から逃れようと何度も捩られる。それを毎回力尽くで引き戻して更に奥へとぶち込んでやると、途端にぎゅっと締まる。
「あっあうっ、くううっ」
背筋を反らして奴が悶える。後頭部がツリーに擦り付けられ、モールのラメがチラチラ降って金髪に散った。かなり良さそうだが、それでもイけるほどではなさそうだ。熱くうねって絡む中を突き上げる俺にもそう余裕はなかったが、わざとペースを落とし奥をぐりぐり捏ねてやる。
「ぐっ、うぐっ、くるし、んんっ」
奥はまだ痛みが強かったか。少しだけ引き抜いて同じ動作を繰り返すと、今度はいいところに当たったようだった。びくんと全身が跳ねる。だだ漏れだった喘ぎが一瞬止まって、声も出せないで痙攣している。
「……っ、……っ! あ、ああはっ、あ、だ、駄目、だ、やめ……!」
今度こそスカイハイは俺を押し返そうと必死で両脚をばたつかせた。もう訳がわからなくなっているのだろう、両目が再び青く発光する。だが、両腕を拘束され、NEXT能力も発動せず、ケツに突っ込まれた状態で何ができるはずもない。力の入らない脚は俺に抱え込まれたまま虚しく空中を蹴って、それだけだった。俺がお構いなしに抽送を続けると、奴の身体からはまた力が失われてされるがままになる。
「あー、もう、イくわ」
俺の方が先に我慢できなくなってそう宣言する。さっきフェラさせといてよかったとつくづく実感した。そうでもしないと、まるで俺が早漏みたいなことになるとこだった。
「んっ、んうっ、え、えっ……?」
イく、と言われて咄嗟に何のことなのか解らなかったらしいスカイハイは、涙でいっぱいの目で俺を見て、それから奴を蹂躙している俺のペニスを見た。
「よーく見とけよ、処女だったケツマンコに初めての中出しだぜ!」
背後から囃す声も興奮で上ずっている。もはや誰もがこいつに突っ込みたくてたまらないのだ。最初はビール片手に眺めていた奴も、今では瓶をその辺に放り出して熱っぽい眼差しを向けている。
スカイハイ自身に見られている。それに頭の血管が切れそうなほど興奮した俺は、そのままの勢いであいつの中に射精した。
「あーっ、あっあああっ! ふあっ、あ、あ」
届く限り奥までペニスを押しこんでぶちまける。二回目だっていうのに俺自身びっくりするくらいの量が出た。やっぱセックスは違うわ。本能がもっともっと腹の奥に精液を叩き込みたいと訴え掛けてきている。どぴゅどぴゅ腹に注ぎながら覗き込んだスカイハイの瞼はかたく閉じられ、金色の睫毛の先では連なった雫がきらきらと輝いている。初めての感触にひたすら耐えようとしているのがよくわかる、いい表情だ。
「んっ、んんっ……」
スカイハイの中は相変わらずぎゅうぎゅう絞りあげてきていた。まだあいつがイッてないのはわかっているが、俺がスッキリしたいだけだから知ったことじゃない。
「あー……」
腰をゆっくり前後させて最後まで出し切り、満足しきったため息を吐いた。ペニスを引き抜く動作に対して裏返った嬌声が返ってくる。見てみると、最初に比べれば随分柔らかくなったアナルが小さく口を開けていて、そこから俺の精液が垂れていた。当のスカイハイは、おそらく無意識にだろう、勃起した性器を突き上げるような動きで緩やかに腰を蠢かせている。いやほんっとエロい、エロいな。さっすがキングオブヒーロー、こんなところまで俺たちの期待を裏切らないって訳か。
「どうだよ、初体験の感想は!」
「そんなこといいからさっさとどけよ、後がつかえてんだ」
皆が性欲を剥き出しにしてにじり寄ってくる。俺は次の奴に場所を譲るためにスカイハイの腰から手を離した。ノンストップで与えられ続けていた刺激から僅かに解放され、スカイハイは荒く呼吸しながらふと正気づいたようだった。
「はあっ、はあっ、は、……ぁ、い、嫌だ、もう……うあああああっ!」
二番手に交代すると、よほど待ちきれなかったのかジッパーを下ろすのももどかしく腰を抱え込む。弱々しい拒絶の声は、すぐに嬌声に変わった。小刻みなピストンに顔を真っ赤にして、がくがく揺さぶられている。
「ああっ……! だ、だめだっ、そんな、そんなに擦らっ、あっあうっ!」
「うわっなんだこれ超気持ちいい、あっあっいい、いく、もうイく」
「はえーよ」
「まだ突っ込んだばっかりだろ」
そういやこいつ早漏だった。流石に二回目に突っ込まれたらスカイハイもイくかと思ったんだが、こいつじゃイかせらんねえだろうな。
犬みたいにハアハア言いながらそいつは呆気なく射精した。
「イく、もうイく、イった、あー出る……」
「あうっうううっ……」
また腹の中に出されてスカイハイが眉を顰めた。中に出された感触くらいは解んだろう。よくポルノ女優が中出しせーえきおいしいとかせーえき出されて熱いとか言うけど、そんな風にはならないか。ありゃ半ば創作みたいなもんだし。
「おら、代われ」
次のやつが早漏野郎を押しのけてスカイハイにのし掛かる。
あいつとスカイハイじゃだいぶ体格に差がある。身体を竦ませるスカイハイをニヤニヤ眺めて、そいつは勃ったまんま放置されていたペニスを掴んだ。そのままぬちゅぬちゅ音をさせて軽く扱く。
「はっう……っ! んんんっ」
ぶるっ、とスカイハイの腰が震える。ケツだけじゃイけなかったスカイハイも、いい加減出したいと思っているはずだ。思わず唇を噛み締めたのは、イく時の声を出さないためだってことがバレバレだ。だが、そいつはスカイハイのペニスをぐっと握り締めた。
「いっ痛っ!」
涙目になったスカイハイの顔を覗きこんでじっとり笑う。
「なあ、イきたいか? ヒーロー」
訊かれたスカイハイはしばらく硬直していたが、やがてゆるゆると首を振った。
「……い、言ったはずだ……わたしは君たちに逆らわないと約束したが、この行為を望んでいる訳ではない」
酷い質問だ。スカイハイの返せる答えなんてそれしかない。わかっていながら訊いたあいつもあいつだけどな。俺はそいつがこの状況を更にどう盛り上げるつもりなのか期待して乗り出した。
「イきたくないなら、その通りにしてやれよ」
「ああ、そうするさ」
男は唇を歪めて笑うと、ツリーの下に幾つか置かれていたプレゼントのリボンを解いてスカイハイの前でひらひら振った。それで俺たちはみんなあいつが何をするつもりなのか察したが、スカイハイだけがひとりぽかんとした顔でそれを見た。ほんとこいつ、想像力がないんだか、あるいは全く知識がないのか。どっちでも面白いことに変わりはしないけどな。
リボンは案の定スカイハイのペニスに巻き付けられ、最後に可愛らしく蝶々結びにされる。充血して今にもはち切れそうになった性器とシャンパンゴールドのリボンとのコントラストが眩しい。そうされている間中、両腕を動かせないスカイハイは俯いて痛みに耐えていた。多分こいつはほとんど性的な経験をしていないのだと思うが、与えられるのは痛みだけじゃない。それは後で思い知ることになるはずだ。
ひゅー、可愛いなあ、と野次が飛んだ。それでも、俺たちの誰もそんな姿を撮影したりはしていない。こうしてプレゼントを取引材料にしてスカイハイをいたぶるだけならこいつが黙っていさえすれば済む話だが、画像や動画を残しておいた場合、こいつが何も言わなくても所属する企業の方が黙ってないだろう。それが解っているから、俺はそのボーダーを超えるような真似だけは絶対にしないように、事前に皆と取り決めてある。それでも、スカイハイがツリーに括り付けられ、ケツから精液を垂れ流しながらビンビンに勃ったペニスにリボンを巻かれている姿ってのは写真の一枚くらい撮っておきたくなるエロさだった。マスクの下から現れた顔が想像以上に清潔そうな美形だったってこともあって、ちょっとそこらじゃ見られないくらいレアな光景だ。
「素直じゃない罰だよ、スカイハイ。『ゆるふわケツマンコに精液中出ししてイかせてください』って言うまでイかせてやらないから、覚悟しろよ」
「ぁ……」
どっと笑いが起こる中、スカイハイは愕然と目を見開いて唇を震わせた。これから自分がどうなるのか、流石にこいつもわかったのだろう。性的な興奮のために紅潮していたはずの顔から、さっと血の気が引く音が聞こえてきそうだ。
「順番じゃあまだるっこしいから皆でやっちまおうぜ」
リボンでスカイハイをラッピングした奴がそう言って、スカイハイの腕をツリーから外した。ただし、両腕はぴったりと縛られたままで、なす術もなく転がされている。誰もがこれからのこいつを想像して、完全に興奮しきっていた。
特別でもなんでもない、よくある住宅街に建つ家のひとつ。そのクリスマスツリーの下で、スカイハイが舌なめずりする男たちに囲まれて怯えて涙ぐんでいる。興奮と期待によって異常なくらいの熱気に包まれつつも辛うじて保たれていた秩序は、その瞬間に決壊した。
「……! ……!」
笑い声、悲鳴、様々な聞くに堪えない音が上がる。一番にスカイハイを犯したのもあって、俺はしばらく皆の後ろで傍観していたが、そろそろ一周しただろう頃合いを見計らって輪姦に加わった。
スカイハイはケツにも口にも散々突っ込まれて精液でぐしょぐしょにされていたが、自分で宣言した通りなかなか屈服しようとはしなかった。言われるがままケツを差し出し、ペニスを銜えることはする。それでも言葉にするのだけはどうしても許せないようだった。だから、何度か目にあのセリフを言えと強制された時、とっくに焦点を失った目であいつがこくっと頷いたときの達成感ときたらなかった。
「はああっ、んふっ、ふううっ、わ、わたしの……ゆるふわ、けつまんこに、あっああんうっんぐっ」
「聞こえないなあ」
「もっとはっきり言え、よっ」
「あっあっ! わた、わたしのゆるふわけつまんこ、に……せーえきなかだしして、イかせてっんあああっ、そして、イかせてくださっ……あああーっ、あーっあーっ……!」
言った。あのスカイハイが、言った。俺たちはますますヒートアップしながら、リクエスト通りたっぷりと腹の中に注いでやる。引き締まったスカイハイの腹が、散々呑みこまされた体液のせいでうっすら膨らんでいる。そうしてやってから、ようやく奴の射精を阻んでいたリボンをほどいてやった。
「んくっ、くふっ、ふううっ、ふっ」
ペニスを抜かれたアナルは、スカイハイ自身に言わせた通り、犯されすぎてぼってりと腫れ、閉じきれずにどろどろの液体を垂れ流していた。ぐぶっ、ぐぶっと音をさせながら精液が吐き出される感覚にも感じて、いつまでも熱い吐息のまま腰をくねらせている。俺たちは何回か出してちょっとスッキリしたのもあって、すっかり見守る態勢になった。
「出したかったら自分でコけよ」
スカイハイは言われたことを理解しているのかしていないのか、しばらくがっくり項垂れたままふうふう喘いでいた。やがてそろそろと手が股間に伸び、自分のペニスを握りこむ。
「ふあああっ、あっあーっ」
何度か軽く扱いただけで呆気なく出た精液は、長時間止められていたこともあって勢いすらなくしてとぷとぷ零れた。ようやく訪れた解放にペニスの先がぴくぴく痙攣する。スカイハイは半分白目をむいて訳のわからない譫言を漏らしている。それでも出し足りない様子のスカイハイは、一心不乱にペニスを擦り続ける。
誰かがスカイハイの丸まった背中を押すと、ペニスを握ったまま横に倒れ込む。その脚を片方持ち上げてやると、ぱくぱく口を開けているアナルが全員に丸見えになった。何人かは休憩すると言ってこの場から立ち去っていたが、それでも居合わせたやつらはそれを眺めて楽しんでいる。
「いいもん見つけたからこれ突っ込もうぜ!」
一人がクリスマスツリーに飾りきれなかったオーナメントの詰まった箱を持ち出してくる。開けた中にはつるつる光る赤や銀のオーナメントが入っていた。そういやツリーのサイズが大きくなる前はこれを飾っていた気がする。今飾られてるのはもう一回りばかり大きいやつなんだが。
オーナメントをキッチンから適当に掴んできた紐に幾つか通したら、即席のアナルビーズの出来上がりだ。いやほんっとお前らエロいことにかけては頭が働くよな。半ば呆れながら、俺もそれに賛同した。実際用意してきたのはローションとバイブだけだったし、なんか物足りないと思ったんだよ。やっぱ多少はバリエーションも必要だろ。あとクリスマスっぽいし。
渡されたオーナメントにローションを垂らす。顔がにやけるのが隠せないが、今更だ。ケツ穴にぬるぬるにのオーナメントを押し付けると、そこは素直にくぱっと開いてそれを呑み込もうとする。すっかりいい穴に仕上がってんなー。やっぱこいつ才能あるわ。感心しつつ、押し当てたそれを少し離してみると、チュッとキスみたいな音が上がる。面白くなって何回か繰り返していたら、スカイハイの方が我慢できなくなって腰を振り始めた。
「今やるから焦るなって、ほら!」
「ひあああっ! あああっ!」
ぐちゅん! と押し込む。途端に背中を反らせて身悶えながらも、やっぱり手の動きは止まらない。次々ぶち込んでやれば、その度に高い嬌声を上げて悦んだ。
「ふーっ、ふっ、は、ふーっ」
用意した分を全部呑み込んだスカイハイの腹は目に見えて膨れている。それがまるで孕んだみたいに見えて倒錯的だ。流石に腹が圧迫されて苦しくなっている証拠に、あいつの額には脂汗が浮かんでいるし、扱く手の動きは随分遅くなっている。それでも萎えていないんだから、よっぽど適応力が高いのか。俺はスカイハイに覆い被さり、耳元に唇を寄せてそっと囁いた。指先はあいつのケツの中に突っ込んだまま、ぐちゅぐちゅ掻き混ぜている。
「なあ、気持ちいいか……?」
スカイハイがこくこく頷く。もう正気なんてどっかに飛んでいっちまってるんだろう。
「あっあっ、き、気持ちい、きもちいい……っ」
「中に何が入ってるかわかるか?」
今度は首を振る。だから俺は教えてやった。オーナメントだよ、クリスマスの。あんまり締め付けたら中で割れちゃうかもなあ。驚いてびくっとスカイハイの身体が揺れる。締めるなと言っているのに、身体の反応はどうしようもない。中は俺の忠告も無視してますますきゅうきゅう締め付けた。
「怖い、こわ……んくっ、はあっあっ、ぬ、抜いて……くれ」
不安をいっぱいに滲ませた顔で、それでも止められないのだろう。腰は相変わらず揺れてるし、ペニスもおっ勃ったままだ。俺が指をアナルから抜くと、一人がスカイハイの手をペニスから引き剥がしてオーナメントが連なった紐を握らせてやった。
「こいつを引っ張って出したらいい」
スカイハイはぽろぽろ泣きながら俺を見る。促すために顎をしゃくると、助けて貰えないことを悟ったあいつは必死に紐を引き始めた。
「んっ、くうっ、……はあうっ」
丸いオーナメントがぬぷっと引き出される。一番直径の大きい部分を抜ければ、あとは勢い良く飛び出してきた。スカイハイがぶるぶると震える。見れば、触ってもいないペニスが痙攣して精液を吐き出している。そういやこいつケツだけでイッたのも今夜が初めてじゃねえの? もう何回もイッてたと思うが、いやー今夜はスカイハイの初めて尽くしだな。俺たちがニヤニヤ見守っていると、スカイハイは三つばかり引き抜いたところで音を上げた。
「もうっ、ふあぁっ、もう……欲し、い……!」
「!」
予想外の反応だった。もう無理、とか、もう嫌だ、というセリフなら想定していたが、まさかスカイハイが自分からペニスを欲しがるだなんて思ってもみなかった。そのたった一言で、俺たちは即座に臨戦態勢になる。単純なもんだが、期待には是非ともお応えしてやるべきだろう? こういう期待なら、尚更な。
一人が無言でスカイハイの手を掴む。握りこんだ手ごと無理矢理残りのオーナメントを引き抜いた。
「ああああああああ!」
雷にでも打たれたように痙攣するスカイハイは、すぐさま別の奴に抱え上げられる。太腿を持ち上げてM字に開脚させられたまま、無防備なアナルにいきり立ったペニスがぶち込まれた。
「はああっあっんあっ……! あ、深い、そし、ああっふか、いぃ……」
「うわっ……」
スカイハイはいつの間にか自分から腰を揺すっている。男性器をぐっぷり咥えて離そうとしない。少しでも引き抜こうとすると駄々を捏ねるようにして嫌がった。最初あれだけ頑なに拒絶していたのが嘘みたいだ。ぬぶぬぶ音を立てながら腰を振るスカイハイの姿を見るのは痛快だった。シュテルンビルトのヒーロー、それもキングオブヒーローが、男に跨って喘いでいるんだから。
「あーやってるやってる。おい、そろそろ喉が乾いたろ? いいもん用意してやったぜ」
一休みすると言って一旦離れていた奴らがぞろぞろ戻ってくる。手には甥っ子がサンタさんのために準備していたミルクとクッキーがあった。やけにニヤついているなと思ったら、一人が精液入りミルクだよ、とネタを明かした。ほとんど精液だけどな!
「ほらっちゃんと持てよ。落として割ったりするなよ?」
喘ぎながら受け取ったはいいものの余裕がないのだろう、スカイハイはグラスを両手に持ったまま飲もうとしない。他の奴がその手を持ち上げてあいつの口元に押し付けた。
「とっとと飲めよサンタさん。ミルクとクッキーのお礼くらい受け取れ」
笑い声に囲まれて、スカイハイはうっすらと唇を開いた。ぐきゅ、と変な音をさせながら喉が上下する。どろっとした液体は飲みにくいだろうに、既にたっぷり精液を飲まされていた事もあって多少は慣れたのだろう。少しずつグラスの中身が減っていく。その様子を、俺たちはシュガークッキーを齧りながら眺めている。
「んぐっ、ぐうっ、……くふ……ぁ……」
ようやく飲み切ったスカイハイに、俺たちは惜しみない拍手を贈ってやった。ここまで来ればキングオブヒーローもただの雌豚だ。一晩でこれだけ調教した俺たちの手腕に感謝して欲しいね。
「よくできましたー」
呼吸を乱れさせ、涙目で息をつくスカイハイの頭をぐりぐり撫でてやる。スカイハイは目を潤ませて辺りを見回すと、俺たちに向かってにっこり笑った。
「ありがとうっ、はあっ、そ、そして、ありがとう……」
* * *
俺は階段に腰をおろし、ダチどもに好き放題犯されるスカイハイを眺めながら、ビールの栓を開けた。正直なところ、最後に二回ばかり連続で出してかなりスッキリしたってのもあるが、なんとなくもうあの中には混ざりたくない気分だった。何だろうな、俺にとってスカイハイは、どっか他のヒーローとは違うんだ。はっきりどこがって言われたら俺自身よくわからないんだが、とにかくスカイハイはMVPなんて獲らなくてもよかったし、KOHなんかにもならなくてよかった。
みんなスカイハイが最初のうちぜんっぜん注目されてなかったことなんか忘れてるけどな、あいつデビューしたては本当にパッとしなかったんだ。そもそもNEXT能力ってやつは、何とか元素っていう、あーとなんだったか、自然を操る系はそんなに特殊じゃないし強くもないんだよ。ああ思い出した、五大元素だ。まあそれはどうでもいい。結局、あの頃はだーれも新人のスカイハイには注目してなかったって事だよ。俺はああいう感じのヒーローを待ってたわけだから、最初っからヒーローカードも買ってたし、ヒーローTVもチェックしてたけどな。
上手く言えないけど、つまり最初のうち失敗ばっかしてポイントなんか全然稼げなかった、あの感じがよかったんだ。ちょっと天然っぽくて、ここ一番ではなんとかやれるけど、それ以外のところで呆気にとられるくらい下らないミスをするスカイハイがさ。多分、俺は気に入ってたんだろうな。
だから、みんなが信じてるご立派なキングオブヒーローを、思いっ切りぶち壊して引きずり落としてやりたかった。最初からあいつが立派なヒーロー様だと思ってるやつらの幻想を跡形もなく粉砕できるような、そういう真似をしてみたかった。それだけだ。
「……」
俺は階段の手すりに凭れかかって、スカイハイが犯されて喘いでるのを黙ったままぼんやりと見守った。俺たちみたいなシュテルンビルトの底辺にいいようにされるあいつの姿に、どうしようもなくほっとしながら。
……そうして気がつくと、夜はすっかり明けていた。
階段に座ったまま寝入っていたせいか、身体が痛くてたまらない。周りを見回すと、悪友どもはソファや何やらを使って思い思いに寝ているようだった。あちらこちらから寝息やいびきが聞こえてくる。俺が眠ってしまっていたのはほんの数時間のはずだが、ブランケットの一枚もなしで寝たから全身が冷え切っている。ぶるっと背中を震わせて、俺はガチガチになった腰を上げた。
クリスマスの朝だ。窓からは早朝のぼんやりとした光が射し、外では鳥が煩く囀っている。いつも昼過ぎ、日によっては夕方にごそごそ起き出すのが普通の俺には、そんな何でもない朝の雰囲気さえ珍しく感じられた。
折しも外では今年最初の雪がちらほら舞っている。深夜のうちに降ったのだろう、雪がうっすらと積もって物音を吸収していた。あまり雪の降らないシュテルンビルトで、ホワイトクリスマスになるのは何年ぶりだったか。
誰もが寝静まった家の中、俺はゆっくりとクリスマスツリーに近付いた。
ツリーの下には、精液でどろどろになったスカイハイが横たわっていた。リボンがところどころに纏わりついて、まるでプレゼントのひとつのようだ。黙ったまま更に近付いていくごとに、あいつの方から何かくちゅくちゅと音が聞こえてくるのがはっきりと耳に入った。
スカイハイは仰向けになった姿勢で両脚をしどけなく投げ出し、腰を小さく揺すりながら、自分でアナルに指を入れて慰めていた。
「んっ、んふっ、んっ、んんう……」
スカイハイの漏らす吐息はごくごく小さくて、よほど傍に寄らないとはっきりわからないくらいだ。俺が最後に突っ込んだ時だって精液が出なくなっていたくらいだから、ただ単純にイキたくてやっている行為ではない。スカイハイは肛虐を純粋に味わっているようだった。うっとりと、陶酔するような眼差しを虚空に投げて、快楽に浸りきっている。
俺は無言のまま、じっとその姿を見下ろした。
理性がぶっ飛んでる状態のままだってことは一目瞭然だ。そのうちこいつが正気に戻るのも見りゃわかるし、そうなったらこいつのことだ、守り切ったプレゼントを背負い、さっさとお空を飛んで帰っていくのだろう。能力を制限する薬の効き目もそろそろ切れてるはずだしな。
こいつが我に返ったらパーティーは終わりだ。姉貴たちが帰ってくる前までにはある程度片付けておかないといけないし、ダチどもも起こして追っ払わないといけない。そんなことを考えながら、俺はただただスカイハイを見つめていた。
どうしてこんなにも、いつまででも見ていたいような気分になるのか、我ながら不思議だった。そりゃあ俺だってこいつで勃つし、やりたくならない訳でもないが、何となく……そう、何となく、せっかくのクリスマスが完全に終わっちまうのが惜しいんだよ。
「んっ、んっ、……ふあぁ……」
ふと、スカイハイの指遣いが止まった。視線が滑るようにゆったりと空中を彷徨って、それから俺に向けられる。
スカイハイはしばらくぼんやりと俺を見上げていたが、その青い両目にじわじわと理性の光が戻ってくるのが克明に窺えた。頬に涙の跡と乾きかけた精液がこびりついている。半ば正気づいたスカイハイは、しかし、やがて俺を見たままにっこり微笑んだ。ちょっと困ったような、それでいて俺がこの人生で初めて向けられるくらいの優しい顔で。
「メリークリスマス……そして……、メリークリスマス……」
それを聞いた瞬間にようやくわかった。なんだ。俺はスカイハイが好きだったのか。
俺は間違えてしまっていたのだ、何もかも。
スカイハイに対して反感を覚えていたんじゃない。ただ、スカイハイのファンとして何百万人もの中の一人として紛れちまうのが悔しかったんだ。俺は最初っからずっとスカイハイを応援してた、あいつをそれこそ文字通りずっと見てきた。それなのに、ヒーローとしてトップに立った途端ににわかファンどもが知ったかぶってキャーキャー騒ぐのが、俺は嫌だった。それならいっそパッとしないままでよかったんだ。そう思っていた。
多分、俺はスカイハイを、俺だけのヒーローと錯覚していたんだ。勝手に期待して勝手に裏切られて、自己満足のために勝手に復讐した。ただそれだけだった。
俺は、寂しかったんだ。
スカイハイは力尽きたのか目を閉じて、すうすうと寝息をたて始めている。
「……メリークリスマス、スカイハイ」
それだけ言った俺は、あとはもう黙ると、スカイハイの隣に腰を下ろした。
窓の外で、雪だけが音もなく降り続けていた。
『Jingle Bells, Shotgun Shells,』
2011年12月30日発行
オンデマ/32P/400円/モブ空